15号機の今

15号機は昭和53年10月31日付けで廃車となり、直後に山梨県中巨摩郡若草町若草町役場(現在、山梨県南アルプス市、南アルプス市役所若草支所)の駐車場に保存されました。27年前のことです。

7月2日に初めて南アルプスに15号機を訪ねました。


身延線の東花輪駅からタクシー7分くらいのところに、南アルプス市役所若草支所はありました。タクシーの運転手さんに、「機関車を見に来る人はいますか」と尋ねると、「はじめてだよ」と笑いました。市役所の入り口には合併前の石造の案内が残っていました(左)。




左は市役所の建物。駐車場の一角に15号機は保存されていました。



「社会を明るくする運動」に一役買っているのでしょうか。






かなり傷んでいます。塗装は部分部分で剥がれています。全体的に茶褐色なのは元の色に錆びが生じたからなのでしょうか。






デッキに上がり室内を見ると、しばらく人が入っていないようで、ほこりがいるかなり積もってようでした。もちろん施錠されていて室内には入れません。


  
室内の機器類は傷みがないようで、大宮工場の文字などもはっきり読み取れます。右の写真は最後の全検のときに貼られたシールでしょうか、昭和51年9月とあります。



足回りはキレイに見えます。



どこで、使われていたレールなのでしょう?



案内版は電気機関車の歴史や種類を紹介しており、ED16だけの解説ではありません。「活動状況」の部分に15号機の説明がありますが、青梅線を走っていたことは一切触れていません。




市役所の敷地の外から



私が写真を撮っていると、高校生くらいの人たちが何人か通りかかり、不思議そうな顔をして私を見ていました。タクシーの運転手さんが言っていたように、ここを訪れる鉄道ファンはほとんどいないのかもしれません。通りかかった人にこの電気機関車をどう思っているかを聞いてみたい気持ちもしましたが、勇気がありませんでした。27年間もここにいるわけですから、日常の当たり前の風景として町に溶け込んでいるのでしょう。それはそれで、15号機にとって幸せな第二の人生なのかもしれませんが。




私は、タクシーで来た道を徒歩で駅に向かいました。振り返ると、薄日が差し始め南アルプスの険しい山々が雲から顔を出していました。この美しい町の中に15号機は保存されています。


ところで、15号機がなぜこの地に保存されるに至ったのか、帰りの電車の中で疑問がわいてきました。中央線に走っていたと言えばそれまでですが、この場所は中央線からは少し離れていますし、何かほかに理由があったのかもしれません。保存に至った経緯を知りえるものなら知りたいと思いました。それと、ホコリがつもった機関室の掃除する人はいないのか…等等。
帰宅した後、私は南アルプス市役所の若草支所に電話で聞いてみました。

電話に出た方はとても親切に対応してくれました。その方からは驚くべき次のような回答をもらいました。
・市町村合併があり、機関車の担当となっている部署があいまいである。
・保存する会があったが、現在その会は解散してしまい、ED16は手入れをされず放置されたままとなっている。

私は、思わず、「掃除をさせてくれませんか」と言うと、その方の一存ではきめられないことと言いながら、詳しいことがわかる人に聞いてみるとのこと。後で連絡をしていただくということで、電話を切りました。

電話を切って、妄想が…、湧いてくる。湧いてくる(笑)。
掃除はもちろんですが、修繕や塗装もできれば最高ではないか。 カンパを募って15号機をきれいな姿に戻せないか? ホームページで呼びかけるとかして?

妄想だけでも楽しいのですが、今は南アルプス市役所からの連絡を待っています。連絡があったらすぐにここで報告します。もし、お許しが出たらまずは、機関室の掃除からやりたいと思います。そのときは、みなさんに協力をお願いしたいと考えているのですが、いかがでしょう。


その後
 7月7日現在までの経過報告。
・掃除することは可能であるそうです(南アルプス市役所からの回答)。
・保存する会は3年前くらいまでは手入れをしており、15年くらい前には町の予算で塗装をしたこともあるそうです。
・南アルプス市役所の方に、保存の会で整備を担当していたKさんを紹介していただきました。Kさんは、甲府機関区で蒸気機関車の保守点検をしていた方です。Kさんに手入れの方法を教えてもらえそうです。

7月28日までの経過報告。
 7月28日、南アルプス市役所若草支所で市民福祉課の方と支所長さん、元保存会のメンバーの方とお会いしました。ED16が貴重な電気機関車であることを説明し、15号機の手入れをお願いしました。市役所の方はたいへん熱心に話を聞いていただき、鍵やブレーキハンドルなども見せてもらいました。今後、役所内で整備について話し合いを持ってくれるそうです。

    
15号機のブレーキハンドル。  右の写真が鍵。


箱のの中にはED27と刻印された工具も入っていました。

 
整備や保存会再結成などが決まったときには、連絡をくれるそうです。そのときはここでお知らせします。今回、サイトなどを通じ協力を要請したところ、たくさんの人に賛同の声を頂戴いたしました。この場をお借りてお礼を申し上げます。まだ具体的なことは決まっていませんが、ぜひ皆様と力を合わせ、15号機を再生させたいと思います。これからもどうか、よろしくお願いいたします。


その後。あれから一年…。2006.7.7
一年という時間が過ぎようとしていましたが、何の連絡もありませんでした。一度こちらから電話してみようと思っていたところに、掲示板に「化粧直しをしていた」という情報が…。すぐに若草支所の支所長さんに電話したところ、一年前に会っていただいた支所長さんは別部署に行かれたということで、電話を回してくれました。元支所長さんによると、今年度の予算に機関車の整備を組み込んだとのこと。私の要請が関係しているか否かは不明ですが、とにかく市の予算で、15号機は綺麗になったそうです。
皆さんと綺麗するという夢は叶いませんでしたが、想定外の好結果になりました。
近いうちに綺麗になった15号機を見てきて報告いたします。

整備のお手伝いをしたいとメールで連絡していただいた皆様、ありがとうございました。
掲示板に情報をくれたHN「ED16ファン」さん、ありがとうございました。



そして2006.7.23

約1年ぶりに15号機を見に行きました。一年前とは見違える姿がありました


キレイ!



                動きそう?




どうですか、この輝き!




軸受け。石が入れられていましたが、油も残っていました。昭和53年の油でしょうか?



案内板も新しくなっていました。ED16の写真はHOゲージのようです。



ミスもありますが、そこは大目に…




こんな写真を撮ったのははじめて…




屋根がついているので、定期的なメンテナンスをしてくれれば、今後も良い状態が保たれるのではないでしょうか。

1年前の要請が関係しているかわかりませんが、こういう結末になるとは想像していなかったです。15号機がいつまでもここに保存され、皆様に愛されることを願ってやみません。


15号機が若草役場(現若草支所)に展示されたころの様子。「広報若草(1979年2月12日発行)」より




ED16のトップに戻る